窯おんど開発の背景と経緯
私の実家には数十年来使用している陶芸用電気窯があり、母はそれを使っての焼きもの作りを一番の楽しみにしてきました。しかし、長年の使用によりヒータの劣化に加え断熱材もくたびれてきており、ここ数年は釉薬の熔けも従前とは違ってきており、“本当に設定温度まで上がっているのか”という疑問が出てきていました。焼成パターンを変更したりもしてみましたが、どうも最高温度にも達成していない事がわかりました。その後しばらくしてから、新しい窯を購入することにもなりましたが、厳寒の中、窯を設置している小屋に温度確認に向かうのは年寄でなくても大変なことです。母屋に居ながらにして温度の管理ができればという思いはむしろ自然なものでしょう。
電気窯に温度管理など必要ない、などと進歩のないことをいう人もいましたが、承知の通り電気窯とて温度の確認は重要で、少し慣れてくると既定の焼成パターン以外での挑戦もしてみたいし、還元雰囲気を試してみたいなど温度をパラメータとした取り組みには必須です。ましてや、ガス窯や灯油窯での温度管理・監視は最重要事項です。遠隔で温度を確認したい、焼成パターンを視覚化したい、データを保存したい、これらに安価に出回っているスマホやタブレットを使わない手はないと思いました。幸いそれらを実現する要素技術は全て社内にありましたので、開発責任者との会話が始まり、もちろんビジネスとしての可能性確認のための市場調査も入念に行う中で非常に短時間に製品化まで進みました。これが、そもそもの製品開発の背景と経緯です。この間、私の母には試作品のモニターもさせ、意見も反映させて製品化となりましたが、一番喜んでくれたのは母であるのは言うまでもなく、窯おんどを頼りに朝から晩まで作陶に励んでいます。
この新分野は社内にタスクフォースを編成して開拓を進めてきましたが、何人かの作家の先生方、陶芸窯のメーカ様や有力販売店様にも大変貴重なご意見を伺い製品に反映させており、この場を借りて御礼申し上げます。
窯おんどの今後
平成29年5月発表の第1弾「窯おんど」に加え同年12月には第2弾として「窯おんど+Plus」を発表いたしました。今後もユニークな同シリーズの製品を順次投入予定です。ご期待ください。