警告灯、それは馬車の渋滞緩和から始まった

警告灯の歴史は古く、産業革命が起こった頃にまで遡ります。当時のイギリスでは、馬車と歩行者が行き交い、ロンドン中心にある金融街の交差点では、交通渋滞が道幅を急激に広げられない都市構造と相まって周辺地域にまで広がりました。

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ヨーロッパの古い町並みと警告灯

警告灯とは

日常生活の必需品である「ランプ(Lamp)」や「ライト(Light)」。そのランプやライトに、「危険な状態」や「警戒」「異常」を伝える意味や機能を持たせ、危険回避や避難行動を促すものが、警告灯です。

警告灯は、接続されている機器やネットワークから制御信号を受けて、点灯、点滅、消灯を行います。

現在では、危険や警戒を伝えるだけではなく、さまざまな目的や分野で利用を広げ、私たちの日々の暮らしや社会に溶け込んでいます。例えば、銀行やスーパーマーケットで空いた窓口やレジを知らせる、ユニバーサルデザインもそのひとつです。

交通渋滞解消が最初の目的

警告灯の歴史は古く、産業革命が起こった頃にまで遡ります。当時イギリスでは、馬車と歩行者が行き交い、ロンドン中心にある金融街の交差点では、道幅を急激に広げられない都市構造と相まって、交通渋滞が周辺地域にまで広がっていました。

そこで、ある鉄道エンジニアが道路に信号設置を提案。これが採用され、1868年12月、初めて交通信号機(Traffic Light)が登場しました。20フィート(約6m)ほどの柱に上下に稼働する腕木が伸び、夜間はガス灯を赤と緑色で切り替える仕組みでした。

この交通信号機は、鉄道ルールをそのまま導入したもので、「緑色」は腕木が下がった状態の「進め」、「赤色」は、腕木が水平になった状態の「止まれ」の合図で、昼夜警官が手動で操作していました。ところがある冬の日、ガス灯のガス漏れが原因で大きな爆発事故が起き、警官が負傷します。その後、この方式の交通信号機が普及することはなく、以降半世紀ほど、ランプ無し腕木方式信号機が近代主要都市で使用されていきます。

1879(明治12年)、エジソンが電球を実用化。ランプの点・消灯はスイッチをON/OFFにするだけで、ガス灯より明るく安全です。画期的な発明でしたが、電気を自由な場所で使うための発電所を含むインフラの整備や、電球を製造するための先進技術は未熟でした。

安全な電気式交通信号機が登場するまで半世紀

古い町並みと信号機

内燃機関を利用した自動車が普及すると、車・馬車・歩行者が交通渋滞を招き、先進国の主要都市で社会問題となります。イギリス方式の緑が進め、赤が止まれというルールをもとに、腕木を操作する手動式交通信号機が1900年代初頭に普及します。交差点ごとに警官が立って操作していましたが、渋滞を効率的に解消するにはまだ課題は山積でした。

1917年(大正6年)、安全性と操作性が増した電気式交通信号機が、サンフランシスコに登場しました。この信号機は、赤と緑の二色灯でロンドンの交通信号ルールを踏襲し、赤は「止まれ(STOP)」、緑は「進め(GO)」で運用が始まりました。

赤、黄色、青の3色の信号機

その後、「進め」から「止まれ」をより安全に移行するため、中間に黄色灯を加えた三色式交通信号機が1923年(大正12年)、アメリカで発明されます。既に赤、緑の二色が国際ルールでしたが、黄色を加え新ルールが決まりました。

ヨーロッパで電気式交通信号機が登場するのは1923年、フランスのパリ。同じ問題を抱える世界の主要大都市に次々と採用されました。

そして、いよいよ日本では1930年(昭和5年)、初めて東京日比谷に電気式交通信号機が設置され、京都などにも広がりました。ある新聞記者が「緑」を「青」と報じ、以降は日本だけ「赤・青・黄色」と表記されました。

1931年(昭和6年)、ジュネーブで道路標識を統一する国際会議が開催され、三色式交通信号機が国際標準となりました。

赤・黄・緑の普及

現代式の3色の信号機

 1950年代後半、日本では高度成長を支える自動車の登録台数が増えていきます。国産のトラック、バス、乗用車が急速に普及します。一方、道路や交通網整備は追いつかず、都市部で渋滞が常態化し交通事故も急増。この頃から交通信号機設置も増えはじめます。

 交通安全教育も始まります。1961(昭和36)年に「赤・青・黄いろ」交通安全こども歌が生まれ、交通教育にも貢献します。ドライバーには交通信号機の意味と遵守が強く求められ、「赤は危険、緑(青)は安全、黄色は注意」という常識が広がっていきます。特に赤は、危険を伝える色として広く認知されます。例えば、自動車の装置異常を伝えるアラートとして赤ランプが点灯しドライバーに伝えます。

 現代では、「赤・緑・黄」が生活に浸透しています。こうして、この三色を標準として、その色の点灯で状態を伝えるという警告灯が普及していったのです。